暗くて湿った場所を好み、夜になるとどこからともなく現れる細長い体とたくさんの足を持つ生き物、ムカデ。その姿を目にしただけで、思わず背筋が凍るような感覚に襲われる人も少なくないでしょう。日本には様々な種類のムカデが生息していますが、家屋周辺でよく見かける代表的なものには、赤褐色の頭と脚を持つ大型の「トビズムカデ」や、全体的に青みがかった「アオズムカデ」などがいます。彼らは基本的に夜行性で、昼間は石の下や落ち葉の中、植木鉢の底、あるいは家の中の床下や壁の隙間、家具の裏などに潜んでいます。そして夜になると、餌となる昆虫や小さな動物を探して活動を開始します。ムカデが私たちにとって非常に厄介なのは、その見た目の不快感だけではありません。彼らは強力な顎(牙)を持っており、これを使って獲物を捕らえるだけでなく、人間に対しても咬みつくことがあります。特に、不用意に触ろうとしたり、寝ている間に誤って体の上に乗ってしまったりした場合などに咬まれる被害が発生します。ムカデの毒は、種類によって強さに差はありますが、一般的に神経毒や溶血毒などが含まれており、咬まれると激しい痛み、灼熱感、腫れなどを引き起こします。痛みは数時間から長い場合は数日続くこともあり、人によっては発熱や頭痛、めまい、吐き気などの全身症状が現れることもあります。さらに、蜂と同様に、ムカデの毒に対してもアナフィラキシーショックという重篤なアレルギー反応を引き起こす可能性があり、これは命に関わる危険な状態です。このように、ムカデは単なる不快な虫ではなく、私たちの健康や安全を脅かす可能性のある危険な生物なのです。そのため、家の中でムカデを見かけた場合は、その危険性を十分に認識し、決して油断することなく、適切な対策を講じることが非常に重要となります。彼らの生態と危険性を理解することが、安全な対策への第一歩と言えるでしょう。