私たちは、長年害虫駆除の現場で活躍されている専門家、高橋さん(仮名)に、蜂の巣駆除における市販スプレーの効果と限界についてお話を伺いました。「市販の蜂の巣駆除スプレーは、近年性能が向上しており、正しく使えば一定の効果は期待できます。特に、アシナガバチの比較的小さな巣であれば、ご自身で駆除できるケースもあるでしょう」と高橋さんは語ります。しかし、同時にプロの視点から見た限界も指摘します。「まず、スプレーが届かない場所に巣がある場合、例えば壁の中や屋根裏の奥深くなどでは、表面的な噴射だけでは内部の蜂まで駆除しきれません。また、巣の規模が大きくなると、内部にいる蜂の数も膨大になり、市販のスプレーだけでは薬剤の量が足りなかったり、全ての蜂を一度に駆除できなかったりする可能性が高まります」。特に危険なのがスズメバチのケースです。「スズメバチは非常に攻撃性が高く、巣の防衛本能も極めて強いです。市販のスズメバチ専用スプレーは強力ですが、それでも駆除作業には相当な危険が伴います。防護服なしでの作業は論外ですし、噴射のタイミングや角度、薬剤の注入方法など、素人の方には難しい判断が必要です。中途半端な攻撃は、かえって猛烈な反撃を招き、命に関わる事故につながりかねません」。では、市販スプレーはどのような場面で有効なのでしょうか。「巣作り初期の、女王蜂が一匹でいる段階や、働き蜂がまだ数匹程度の非常に小さな巣であれば、安全に配慮した上で使用できる可能性はあります。ただし、それでもアシナガバチなど比較的おとなしい種類に限った方が良いでしょう。また、スプレーは緊急避難的に使用する場面も考えられます。例えば、家に蜂が侵入してきた際に、直接噴射して動きを止めるなどです。あるいは、巣の駆除後に残った『戻りバチ』対策として、巣があった場所の周辺にスプレーしておくのも有効です」。高橋さんは最後にこう強調します。「市販スプレーは便利なツールですが、万能ではありません。その限界をよく理解し、決して過信しないことが重要です。蜂の種類、巣の大きさ、場所などを冷静に判断し、少しでも危険を感じたら、迷わず我々のような専門業者にご相談ください。安全が何よりも優先されるべきです」。プロの言葉は、市販スプレーとの賢い付き合い方を教えてくれます。
プロが語る駆除スプレーの限界と可能性