家の蜘蛛を殺さないという選択肢?益虫との共存
部屋の隅で蜘蛛を見つけた時、多くの人が反射的に殺虫剤に手を伸ばしたり、ティッシュペーパーで潰したりしてしまいます。その姿形からくる生理的な嫌悪感は、仕方のないことかもしれません。しかし、一呼吸おいて、彼らの存在意義について考えてみるという選択肢もあります。これまでも述べてきたように、家の中にいる蜘蛛のほとんどは、人間に害を及ぼすことなく、むしろ不快な害虫を捕食してくれる「益虫」としての役割を担っています。ゴキブリやハエ、蚊、ダニといった、衛生的な問題や不快感をもたらす虫たちを、彼らは静かに、そして着実に処理してくれているのです。化学薬品である殺虫剤を家の中に散布することに抵抗がある人にとって、蜘蛛はまさに天然の害虫駆除業者と言えるでしょう。もちろん、だからといって蜘蛛との共同生活を積極的に受け入れろ、というわけではありません。どうしてもその存在が許容できないのであれば、殺さずに外へ逃がしてあげるという優しい方法もあります。空き箱やプラスチックのカップをそっと蜘蛛にかぶせ、下に厚紙を滑り込ませて捕獲し、屋外で放してあげるのです。この方法なら、家も汚れず、罪悪感を感じることもありません。私たちの住む家は、完全に無菌で、他の生き物と隔絶された空間ではありません。時には、こうした小さな生き物と折り合いをつけ、その恩恵に目を向けてみる。蜘蛛を殺さない、という小さな選択は、私たちの暮らしと自然との関係性を、少しだけ優しいものに変えてくれるかもしれません。