それはある夏の日のことでした。朝、キッチンに立つと、シンクから壁を伝ってどこかへ向かう、黒い線が動いているではありませんか。最初は目を疑いましたが、それは紛れもなく蟻の行列でした。しかも、よく見ると一匹一匹がとても小さい。おそらくイエヒメアリという種類なのでしょう。どこから入ってきて、何を目指しているのか。パニックになりながらも、まずはティッシュで目の前の行列を拭き取りましたが、すぐにまた新たな行列ができてしまいます。これは根本的な対策が必要だと痛感しました。最初に試したのは、市販の殺虫スプレー。行列に向かって噴射すると、確かに蟻は動かなくなります。しかし、薬剤がかかっていない場所からは次々と新しい蟻が現れ、まさに焼け石に水状態。スプレーの臭いも気になるし、キッチンで使うのは少し抵抗がありました。次に、インターネットで調べて効果がありそうだった「ベイト剤(毒餌剤)」を試してみることに。蟻が好みそうな甘い成分と殺虫成分が入っていて、巣に持ち帰らせて巣ごと退治するという仕組みらしい。早速、行列の通り道や、侵入経路と思われる窓際の隙間、シンクの下などに設置してみました。説明書によると効果が出るまで時間がかかるとのこと。数日間は、まだ蟻の行列が見られましたが、以前より少し勢いがなくなったような気もしました。そして設置から一週間ほど経った頃、明らかに蟻の数が減っていることに気づきました。さらに数日後には、あれほどしつこかった行列が、ついに完全に消滅したのです。ベイト剤の効果を実感しました。しかし、これで終わりではありません。侵入経路を断たなければ、また同じことの繰り返しです。蟻が出てきていた窓際のサッシの隙間や、壁の小さなひび割れなどを、ホームセンターで買ってきたコーキング材で徹底的に塞ぎました。また、食品の管理も見直し、開封済みのものは全て密閉容器に入れるようにしました。それ以来、我が家のキッチンであの忌まわしい蟻の行列を見ることはなくなりました。蟻対策は、駆除と予防の両輪で、根気強く行うことが大切だと身をもって学びました。
台所の蟻行列私が試した対策あれこれ