近年、日本の各地でその存在が確認され、生態系や私たちの生活への影響が懸念されているのが、特定外来生物に指定されている「アルゼンチンアリ」です。もし、あなたの家やその周辺で、見慣れない蟻が大量発生している場合、それがアルゼンチンアリである可能性も否定できません。アルゼンチンアリは、南米原産の非常に小さな蟻で、体長は2.5ミリメートル程度、体色は黒褐色から褐色です。一見すると、他の在来種の小型アリと見分けるのが難しいかもしれませんが、いくつかの特徴があります。まず、彼らは非常に攻撃的で、他の蟻や昆虫を積極的に襲い、在来のアリを駆逐してしまうことが知られています。また、繁殖力が非常に高く、一つの巣に多数の女王アリが存在する「多女王制」であるため、個体数が爆発的に増加しやすいという特徴があります。さらに、異なる巣の個体同士でも争うことなく協力し、広大な範囲に巨大なコロニーネットワーク(スーパーコロニー)を形成することがあります。家屋への侵入性も高く、わずかな隙間からでも侵入し、屋内で大群を成して餌を求めて徘徊します。甘いものだけでなく、肉や油などにも集まる雑食性です。アルゼンチンアリの被害は、単に家の中で不快な思いをするだけにとどまりません。在来のアリを駆逐し、昆虫相を変えてしまうことで、地域の生態系バランスを崩す恐れがあります。また、農業害虫を保護したり、逆に益虫を捕食したりすることで、農業への影響も懸念されています。もし、自宅周辺で「動きが非常に素早い」「大群で行動している」「刺激すると噛みついてくる(痛みは少ない)」「他の蟻を攻撃している」といった特徴を持つ小型のアリを発見した場合は、アルゼンチンアリの可能性があります。アルゼンチンアリの駆除は、その繁殖力と拡散力の高さから、個人での対策には限界があります。市販のベイト剤が効きにくい場合もあり、専門的な知識と技術が必要です。疑わしい蟻を発見した場合は、絶対に自分で駆除しようとせず、まずはお住まいの自治体の環境担当部署や、専門の害虫駆除業者に連絡し、相談してください。専門家による正確な同定と、地域全体での連携した防除対策が、被害の拡大を防ぐために不可欠となります。
要注意外来種アルゼンチンアリの特徴と対策