飲食店にとって、ハエの発生は単なる不快感にとどまらず、食品衛生上の重大なリスクであり、店の評判を大きく損なう可能性のある深刻な問題です。ハエは病原菌を媒介する可能性があり、食材や調理済みの食品に卵を産み付けられでもしたら、食中毒の原因にもなりかねません。そのため、飲食店では徹底したハエ対策が不可欠となります。ハエが飲食店に産卵する場所は、家庭よりもさらに多岐にわたります。厨房内では、やはり「生ゴミ」を保管するゴミ箱やゴミ置き場が最大の発生源となります。調理過程で出る大量の野菜くずや肉・魚のアラ、食べ残しなどは、ハエにとって最高の産卵場所です。ゴミは蓋付きの密閉容器に入れ、こまめに回収・処分し、ゴミ箱やゴミ置き場自体も定期的に高圧洗浄などで清掃・消毒する必要があります。「グリストラップ(油脂分離阻集器)」も非常に重要な発生源です。厨房排水に含まれる油脂や食品カスが溜まり、ヘドロ化することで、イエバエやチョウバエなどが繁殖する温床となります。法令で定められた清掃頻度を守ることはもちろん、日常的な点検と適切な維持管理が不可欠です。「床や壁の隙間、排水溝」も見逃せません。床にこぼれた食品カスや油汚れが隙間に溜まったり、排水溝にヘドロが付着したりすると、そこが発生源となることがあります。厨房内の清掃は隅々まで徹底し、床や壁にひび割れなどがあれば補修することも重要です。「食品保管庫」も注意が必要です。特に、常温で保管する野菜や果物、乾物などは、わずかな傷みや湿気からハエを誘引し、産卵場所となる可能性があります。食品は先入れ先出しを徹底し、定期的に棚卸しと清掃を行い、傷んだものは速やかに廃棄しましょう。「ドリンクバー周辺」なども、こぼれたジュースなどがショウジョウバエの発生源となることがあります。これらの発生源対策に加え、外部からのハエの侵入を防ぐことも重要です。出入り口にはエアカーテンや防虫カーテンを設置し、窓には網戸を取り付け、破損がないか定期的に点検します。搬入口の管理も徹底し、荷物の搬入時にハエが侵入しないように注意が必要です。飲食店におけるハエ対策は、HACCPなどの衛生管理システムに基づき、従業員一人ひとりが高い意識を持って、日々の清掃、点検、記録を継続的に行うことが求められます。