これは、私の友人である佐藤さん(仮名)が体験した、少し苦いお話です。佐藤さんは整理整頓があまり得意ではなく、特にネット通販で買い物をした後のダンボールを、部屋の隅にとりあえず積み重ねておく癖がありました。「そのうちまとめて捨てよう」と思いつつ、数ヶ月分のダンボールが小さな山になっていたそうです。その年の夏、佐藤さんは家の中で頻繁にゴキブリを見かけるようになりました。最初は一匹、二匹だったのが、次第にその数が増え、夜中にキッチンに行くと必ずと言っていいほど遭遇するようになったのです。市販の殺虫剤やホウ酸団子を試しましたが、効果は一時的。どこからともなく現れるゴキブリに、佐藤さんはすっかり参ってしまいました。原因がわからず困り果てていたある日、意を決して部屋の大掃除を始めた佐藤さん。そして、問題のダンボールの山を片付けようとした時、衝撃の光景を目にしたのです。ダンボールとダンボールの隙間、そしてダンボールの波状の内部に、無数の黒い点々…ゴキブリの糞と、そして卵鞘(卵が入ったカプセル)がびっしりと付着していたのです。さらに、ダンボールを持ち上げると、下になっていたダンボールの隙間から、数匹のチャバネゴキブリが慌てて逃げ出しました。あのダンボールの山が、ゴキブリたちにとって格好の住処、そして繁殖場所になっていたのです。暖かく、暗く、隠れる場所も豊富で、近くには(おそらくキッチンの)餌もある。ゴキブリにとってはまさに理想的な環境だったのでしょう。佐藤さんはその場で全てのダンボールをゴミ袋に詰め込み、すぐに処分しました。その後、徹底的な駆除と清掃を行った結果、ようやくゴキブリの姿を見かけることは少なくなったそうです。佐藤さんはこの経験を通して、不要なダンボールを安易に放置することの恐ろしさを痛感したと言います。「たかがダンボール、と思っていたけれど、あれがゴキブリを呼び寄せ、育てていたなんて…」と、深く反省していました。この話は、私たちにとっても他人事ではありません。便利さの裏にあるリスクを理解し、不要なダンボールは溜め込まずに速やかに処分する。この基本的な習慣が、ゴキブリのいない快適な住環境を守るためには非常に重要であることを、改めて教えてくれる事例です。
段ボール放置がゴキブリの温床になった話