マンションやアパートなどの集合住宅において、ハトの被害は個人の問題にとどまらず、建物全体の大きな問題へと発展することがあります。あるマンションでは、一部の住戸のベランダにハトが巣を作り始めたことがきっかけで、深刻な問題へと発展しました。最初は被害を受けている住戸だけの問題と捉えられていましたが、ハトの数が増えるにつれて、糞が下の階のベランダや共用廊下にまで落下するようになり、他の住民からも苦情が寄せられるようになりました。美観が悪化するだけでなく、衛生面での不安も広がり、マンション全体の資産価値にも影響が出かねない状況でした。この事態を受け、マンションの管理組合は緊急に対策を検討することになりました。しかし、対策を進める上ではいくつかの課題がありました。まず、駆除や対策にかかる費用を誰が負担するのかという問題です。被害を受けている特定の住戸だけの負担とするのか、それともマンション全体の修繕積立金などから捻出するのか、住民間での合意形成が必要でした。また、どのような対策を講じるかについても意見が分かれました。鳩よけネットを設置する場合、景観を損ねるのではないかという懸念や、全戸一律に設置する必要があるのかといった議論がありました。さらに、鳥獣保護管理法への配慮も必要でした。巣に卵や雛がいる場合は、勝手に撤去できないため、専門業者に依頼し、法的な手続きを踏む必要があることも確認されました。管理組合は、まず専門のハト駆除業者に調査を依頼し、被害状況の正確な把握と、効果的な対策案の提案を受けました。その上で、住民説明会を開催し、被害の現状、対策の必要性、費用負担案、具体的な対策方法(ネット設置のデザインや範囲など)について丁寧に説明し、意見交換を行いました。時間はかかりましたが、粘り強い対話の結果、最終的にはマンション全体で対策を講じることで合意が得られ、専門業者による一斉駆除と鳩よけネットの設置が実施されました。費用は修繕積立金から支出することになりました。この事例からわかるように、集合住宅でのハト問題の解決には、管理組合が中心となって、住民間の合意形成を図りながら、専門家の意見も参考に、計画的に対策を進めることが不可欠です。個々の住民が勝手に対策を行うのではなく、建物全体の問題として捉え、協力して取り組む姿勢が求められます。
集合住宅の鳩問題解決への道のり