あれは忘れもしない、深夜にトイレに起きた時のことでした。眠い目をこすりながら便座に座り、ぼんやりと床に目をやると、何やら黒っぽいものが動いているのに気づきました。最初は髪の毛かゴミかと思いましたが、よく見るとそれは、長い触角と太い後ろ脚を持つ、不気味な姿の虫でした。大きさは3センチほどでしょうか。カマドウマです!その瞬間、私の眠気は完全に吹き飛び、全身が恐怖で硬直しました。漫画や図鑑で見たことはありましたが、実物、しかも自宅のトイレで遭遇するのは初めてです。とにかく気持ち悪い!そして怖い!便座から飛び上がり、後ずさりしました。カマドウマは、私の気配に驚いたのか、突然、その強力な後ろ脚でピョーンと跳ね上がり、壁に張り付きました。その動きの俊敏さに、さらに恐怖心があおられます。どうしよう、どうやって退治すればいいの?殺虫剤はどこだっけ?パニックになりながらも、トイレの棚に置いてあったゴキブリ用の殺虫スプレーを手に取りました。しかし、相手は素早いカマドウマ。スプレーを噴射しようと狙いを定めている間に、またピョンと跳ねて別の場所に移動してしまいます。まるで私をあざ笑うかのように。しばらくの間、狭いトイレの中で、私とカマドウマの追いかけっこが続きました。薬剤の臭いが充満し、息苦しくなってきます。もう半ばヤケクソになりながらスプレーを乱射し、ようやくカマドウマの動きを止めることができました。しかし、床に転がったその亡骸を処理するのも一苦労。ティッシュを何枚も重ねて掴み、震える手でトイレに流しました。その夜は、もう怖くてトイレには入れませんでした。翌日、なぜカマドウマが家の中に、しかもトイレに現れたのか調べてみました。彼らは湿気が多くて暗い場所を好み、床下や排水溝などから侵入してくることが多いそうです。我が家のトイレも、確かに少しジメジメしていたかもしれません。換気が不十分だったのでしょう。この恐怖体験以来、私はトイレの換気を徹底し、除湿剤を置くようになりました。そして、念のため、侵入経路になりそうな換気口や排水口周りの隙間がないかもチェックしました。あの「便所虫」との遭遇は、家の衛生管理、特に湿気対策の重要性を痛感させてくれた、忘れられない出来事となりました。