家の周りやベランダなどで、一匹のスズメバチがウロウロと飛んでいるのを見かけると、不安に感じるのは当然のことです。たった一匹だから大丈夫だろう、と軽く考えてしまいがちですが、その一匹が持つ意味を理解しておくことは、安全確保のために非常に重要です。春先から初夏にかけて見かける一匹のスズメバチは、冬眠から目覚めた女王蜂である可能性があります。女王蜂は、単独で巣を作るのに適した場所を探して飛び回っています。もし、あなたの家の軒下や壁の隙間、庭木などが巣作りに適していると判断されれば、そこに巣を作り始めてしまうかもしれません。巣が初期段階であれば、まだ働き蜂の数も少なく、比較的安全に駆除できる可能性もありますが、気づかずに放置してしまうと、夏には数十から数百匹の働き蜂が活動する大きな巣へと成長し、非常に危険な状態になります。また、夏以降にウロウロしている一匹は、働き蜂である可能性が高いです。働き蜂の中には、餌場を探したり、新たな巣を作る場所を探すための偵察活動を行う個体もいます。特定の場所をしきりに気にしている様子や、同じ場所を何度も行き来している場合は、近くにすでに巣が存在するか、巣を作るための下見をしている可能性が考えられます。もちろん、単に餌を探している途中だったり、何らかの理由で迷い込んできただけというケースもあります。しかし、その一匹が危険な状況の前触れである可能性も否定できないため、油断は禁物です。スズメバチを見かけても、慌てて騒いだり、手で追い払おうとしたりするのは絶対にやめましょう。スズメバチは刺激されると攻撃してくることがあります。静かにその場を離れ、蜂の行動を観察することが大切です。もし、頻繁に見かけるようになったり、特定の場所への執着が見られたりする場合は、専門の駆除業者に相談することを検討すべきでしょう。たかが一匹、されど一匹。その背景にある可能性を考慮し、冷静かつ慎重な対応を心がけることが、スズメメバチによる被害を防ぐための第一歩となります。