それは、夏の暑さがピークを迎えたある日のことでした。夕食の準備をしようとキッチンに立った私は、シンクの隅に置いていた三角コーナーのネットを交換しようと手に取りました。その瞬間、ネットの内側に付着していた生ゴミの中に、白い米粒のようなものがびっしりと付いているのを発見したのです。一瞬、何かの食べカスかと思いましたが、よく見るとそれは細長く、規則的に並んでいるようにも見えます。まさか…?嫌な予感が頭をよぎり、スマートフォンのライトを当ててさらに詳しく観察すると、それは紛れもなく虫の卵でした。大きさや形からして、ハエの卵に違いありません。全身に鳥肌が立ち、思わず「ひぃっ!」と短い悲鳴を上げてしまいました。昨日捨て忘れたスイカの皮か何かに、いつの間にか産み付けられていたのでしょう。三角コーナーは毎日掃除していたつもりでしたが、少し油断した隙を突かれたようです。とにかく、このまま放置するわけにはいきません。私はゴム手袋をはめ、三角コーナーのネットごとビニール袋に入れ、口を固く縛りました。そして、三角コーナー本体とシンク周りを、洗剤とブラシを使って徹底的に洗浄しました。排水口の中も、念入りにブラシでこすり、熱湯を流し込みました。それでも、キッチン全体にまだハエの卵が残っているのではないか、あるいはすでに孵化してウジが発生しているのではないかという不安が頭から離れませんでした。ゴミ箱の中も恐る恐る確認しましたが、幸いそちらには卵らしきものは見当たりませんでした。その日は、キッチンを使うのがためらわれるほど気分が悪く、食欲もすっかり失せてしまいました。あの白い粒々の光景が、何度もフラッシュバックします。この経験以来、私は生ゴミの処理に以前にも増して神経質になりました。生ゴミは必ずその日のうちに水分をよく切り、新聞紙に包んでからビニール袋に入れ、さらに蓋付きのゴミ箱へ。三角コーナーも毎日ハイターで除菌するようになりました。ハエは本当にわずかな隙と油断を見逃さない、恐ろしい存在だと痛感しました。あの恐怖を二度と味わわないためにも、キッチン周りの衛生管理は徹底し続けようと心に誓った、忘れられない一日となりました。