あれは忘れもしない、梅雨時の蒸し暑い夜のことでした。キッチンで洗い物を終え、ふと足元に目をやると、黒光りする憎き影、ゴキブリがいたのです。悲鳴を上げそうになるのを必死でこらえ、スリッパで応戦しようとした瞬間、奴は驚異的なスピードで冷蔵庫の裏へと姿を消しました。その夜から、私はゴキブリの影に怯える日々を送ることになったのです。市販の殺虫剤は強力ですが、あの独特の匂いと、床に残る成分が気になっていました。特に食べ物を扱うキッチンでは、できるだけ使いたくない。そんな時、インターネットで見つけたのが「ハッカ油」でした。自然由来の成分で、ゴキブリが嫌う香りだというのです。半信半疑でしたが、藁にもすがる思いでドラッグストアへ走り、ハッカ油とスプレーボトル、消毒用エタノールを購入しました。ネットで調べたレシピ通り、エタノールにハッカ油を数滴垂らし、水で薄めてハッカ油スプレーを自作。まずはゴキブリが出没したキッチン周りを中心に、シュッシュッとスプレーしてみました。爽やかなミントの香りが広がり、気分的にはとても良い感じです。これで本当に奴らがいなくなってくれるのだろうか、と不安半分、期待半分でした。それから毎日、特に夜寝る前と朝起きた時に、キッチンの排水溝周りやゴミ箱の周り、冷蔵庫の裏、窓のサッシなどにスプレーするのを日課にしました。最初の数日は、まだ奴の気配を感じるような気がして落ち着きませんでしたが、一週間ほど続けた頃でしょうか。ふと気づくと、あの黒い影を見かけることがなくなったのです。もちろん、侵入経路を塞いだり、生ゴミをこまめに処理したりといった基本的な対策も同時に行いましたが、ハッカ油の清涼感のある香りが漂うキッチンは、以前よりも格段に安心できる空間になりました。完璧にいなくなったと断言はできませんが、少なくとも私の家では、ハッカ油が良い仕事をしてくれているようです。今では、掃除の仕上げにハッカ油スプレーを撒くのが習慣になっています。化学薬品に頼らないゴキブリ対策を探している方には、一度試してみる価値があるかもしれません。