あれは初夏のよく晴れた日のことでした。庭の手入れをしていると、物置の軒下に手のひらほどの大きさのアシナガバチの巣ができているのを発見しました。まだ働き蜂の数もそれほど多くないように見えます。「これなら自分で駆除できるかもしれない」。そう考えた私は、ホームセンターへ走り、アシナガバチ専用の駆除スプレーを購入しました。選んだのは、噴射距離が長く、速効性があると謳われているジェット噴射タイプ。説明書を熟読し、いざ決行の時を待ちます。駆除作業は、蜂の活動が鈍る夜間に行うのが鉄則。その日の夜、日が完全に暮れてから2時間ほど経った頃合いを見計らい、私は完全防備で庭に出ました。長袖長ズボンはもちろん、帽子にマスク、ゴム手袋、そして念のために古いレインコートを羽織りました。心臓はドキドキと高鳴り、手に汗がにじみます。懐中電灯には赤いセロファンを貼り付け、巣を直接刺激しないように注意しながら、そっと物置に近づきました。巣には数匹の蜂がじっと止まっているのが見えます。風向きを確認し、風上から巣に向かって、数メートル離れた位置でスプレー缶を構えました。息を止め、一気にトリガーを引きます。シューッという音と共に、白い薬剤が勢いよく噴射され、巣全体を包み込みました。推奨されている通り、20秒以上は連続して噴射し続けたでしょうか。薬剤を浴びた蜂たちは、ほとんど抵抗する間もなく地面に落下していきました。噴射を終えると、私はすぐにその場を離れ、家の中からしばらく様子を窺いました。翌朝、恐る恐る巣があった場所を確認すると、蜂の姿は一匹も見当たりません。地面に落ちている死骸を確認し、駆除が成功したことを確信しました。長い棒を使って巣を地面に落とし、ビニール袋に入れてしっかりと口を縛り、処分しました。巣があった場所にも念のため再度スプレーを吹き付け、戻り蜂対策も行いました。初めての駆除作業は緊張しましたが、適切なスプレーを選び、正しい手順で行えば、初期の巣であれば自分でも対処できるのだと実感しました。しかし、これはあくまで巣が小さく、相手が比較的おとなしいアシナガバチだったからかもしれません。もしスズメバチの巣だったら、あるいは巣がもっと大きかったら、迷わずプロにお願いしていたでしょう。安全第一、これが鉄則ですね。
駆除スプレーでアシナガバチの巣に挑む